大阪高等裁判所 昭和32年(う)166号 判決
蓄音器は物品税法第一条により課税物品であり、その税率は同法第二条により物品の価格によるべきものと定められ、その物品の価格即ち課税標準価格とは同法第三条第一項に「製造場より移出する時の物品の価格とす」と定められ、その意味は時価即ち通常の取引形態及び取引事情における価格、従つて適正な市場又は取引価格を指すのであることは既に判例の示すところである(昭和二六年(れ)第二三三四号同三一年五月一〇日最高裁判所第一小法廷判決―最高裁判所判例集第一〇巻第五号参照)故にこの時価とは必ずしも現実に取引された販売価格を指すものではないけれども、その物品に公定価格がある場合、又は取引当事者間に特殊の関係があつたため価格につき別段の定めをしたような場合等特別な事情のある場合を除き、製造者が当該物品を通常の卸取引形態及び取引事情の下において取引された場合にはその販売価格を以て時価即ち課税標準価格となすべきものである。よつてこれを本件蓄音器についてみるに、被告会社が松岡清太郎に卸販売するに当りその製造場より移出する時の販売価格は上記認定のとおり税込単価二七〇〇円又は二七六〇円であつて、この価格の定めについては特段の事情があつたとも考えられず、通常の卸取引形態及び取引事情の下において定められたものと認められるから、この販売価格を以て税込時価となすべきであり、これを根基として課税標準額の算定をなすことは容易である、といわねばならない。
(裁判長判事 武田清好 判事 南新一 判事 小川武夫)